「子供を作らないの」って聞くのってこれってパワハラですか?

職場の既婚女性や既婚男性対して、子供を作る予定があるのかないのか気になる人もいるでしょう。
上司が部下への担当業務の割り振りを考える上で、産育休のタイミングを把握しておきたいということもあります。
子供を作るかどうかということは、非常にセンシティブ(繊細)な内容であるため、聞いてもいいのかためらわれることが多い話題です。
上司が「子供を作らないの」と聞くことはパワハラになるのか、上手な聞き方についてもご説明します。

「子供を作らないの」はパワハラか?

「子供をつくらないの」と聞くことがパワハラになるかどうかは、誰が誰に対して、どのような理由で聞くかによるでしょう。
先に結論を述べると、上司が業務上知りえる必要があって部下に対して聞く場合は、パワハラとは言えないと考えられます。
一方で、業務上知りえる必要がないのに興味本位や悪意を持って聞いた場合、パワハラに該当する可能性があるでしょう。

パワハラとは?

パワハラは、2019年5月に可決・成立した「改正労働施策総合推進法第30条2項」により、下記の通り明確な定義づけがされています。

事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
引用:改正労働施策総合推進法第30条2項

同法に基づき、厚生労働省ではパワハラを以下6つの類型に分類しています。

  1. 身体的な攻撃
  2. 精神的な攻撃
  3. 人間関係からの切り離し
  4. 過大な要求
  5. 過小な要求
  6. 個の侵害

上司から部下への「子供をつくらないの?」という質問は、上記に照らし合わせると「6.個の侵害」に当たる可能性があります
「6.個の侵害」の定義は以下の通りです。

プライベートの時間に私的な誘いに無理に付き合わせたり、個人的なことを詮索したり、本人の了解なく個人情報を暴露したりするなど

業務上不必要であるのにも関わらず「個人的なことを詮索する」という行為に捉えられてしまうと、パワハラ認定されてしまう可能性があるので注意が必要です。

パワハラ加害者にならないためには

パワハラのうち「個の侵害」は判断の基準が難しく、無自覚のうちに加害者や被害者になっている例が多いことが特徴です。
多種多様な生き方・考え方が存在する昨今、プライベートなことを他人に明かしたくないと考える人が多数いるのだということを理解しておく必要があります。
上司と部下の関係であっても、適正な距離を守って余計な質問はしないこと、聞いてしまって相手が不快に感じているようであれば、お詫びの気持ちを伝えることなどが重要です。

「子なしハラスメント」という言葉

同僚が同僚に対して「子供をつくらないの」と聞くことは、パワハラではなく「子なしハラスメント」に該当する可能性があるのでこちらも注意が必要です。
「子なしハラスメント」とは、子どものいない夫婦に対して、不快な言動・行動をすることを指します。
生き方が多様化してきている中で、結婚しない、または結婚しても子どもを産むことが当たり前ではなくなってきているのが現状です。
しかし「結婚すべき」「子を産み育てるのが当たり前」というような固定観念を持つ人が根強く残っており、子なしハラスメントに繋がってしまっていると考えられます。

「子なしハラスメント」の具体的な例

次に、「子なしハラスメント」の具体例を見てみましょう。

・いつ頃、子どもを作る予定なの?
・子どもは欲しいとは思わないの?
・なんで子どもを作らないの?
・どっちかが不妊なの?
・子どもを作るべきだよ(子どもはかわいから作った方がいいよ)
・子どもがいないから楽だよね
・子どもがいないから残業できるよね

子どもを作らない/作れない理由は人それぞれあり、例えば以下のような理由が考えられるでしょう。

・子どもを作るつもりがない(子どもが好きではない・夫婦の時間を優先したい)
・経済的な理由で子どもを作れない
・不妊で授かれなかった
・健康上の理由で子どもを作れない

子どもが欲しくても授かれない人対して、無神経に「子なしハラスメント」発言すると相手を深く傷つける可能性があります。
また、子どもを作れない人はかわいそうで、作らない人は自分勝手だというように言われるケースも聞きますが、子どもを作らないという選択も個人の自由であり、他人に責められるべきものではありません。
人それぞれの価値観があるため、偏った意見や考え方を押し付けるべきではないということを理解しましょう。

「子なしハラスメント」の対処方法

会社の同僚に「子なしハラスメント」をされてしまった場合の対処方法は、3つ考えられます。
1つ目は、毅然とした態度でシンプルに答えることです。
子どもを産まないとしても産めないとしても、相手には関係のないことなので正直に答える義務はありません。
「まだです」「そのうち考えます」というように、詳細は述べず手短に答えて話を切り上げるのが良いでしょう。

2つ目は、信頼できる先輩や上司に相談することです。
1度のハラスメントであれば1つ目のようにやり過ごす方法もありますが、昼食時や飲み会の席などで何度も話題に挙げてくるような人に対しては、第三者から注意してもらう必要があるでしょう。
無自覚な言動である場合が多いため、第三者から指摘されたらたいていの場合はもう聞いてくることはなくなります。

3つ目は社内の相談窓口に相談することです。
上司や同僚に相談しても改善しなかった場合には、当事者が悪意を持って発言している可能性が高いため、社内の相談窓口に相談する必要があります。
事業者はハラスメントを防止・改善する義務が課せられているため、なんらかの解決策を検討してくれるでしょう。

まとめ

「子どもを作らないの」と聞くのがパワハラに該当するか、ということについてご説明しました。
先に述べた通り、現代は生き方や考え方が多様化してきており、少し前まで当たり前だった考え方が当たり前ではなくなってきています。
いつの時代においても大切なことは、例え相手の生き方や考え方が理解できなくても「否定しない」こと、自分の「考え方を押し付けるような言動をしないこと」が重要です。