コーヒー買ってきてって、パワハラでしょうか?

会社の上司や先輩から「コーヒー買ってきて」と言われたことがある人も多いのではないでしょうか?
昨今さまざまなハラスメントを聞くようになりました。パワハラからセクハラ、マタハラ、モラハラ、最近ではリモハラと言ったものもあります。このようにハラスメントと言ってもその場面や状況によって様々なものがあります。どのハラスメントにしても看過できない問題ではありますが、その中でも注意するべきハラスメントとして「パワハラ」があります。仕事をしていると上司と部下といった上下関係から気づかない間にパワハラとなっているケースも少なくありません。

パワハラは3つの要素で構成されている

パワハラの定義としては厚生労働省が挙げている「パワーハラスメントの定義について」にあるように「3つの要素が満たす場合」とあります。

 要素意味
優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること○ 当該行為を受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係に基づいて行われること
業務の適正な範囲を超えて行われること○ 社会通念に照らし、当該行為が明らかに業務上の必要性がない、又はその態様が相当でないものであること
身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること○ 当該行為を受けた者が身体的若しくは精神的に圧力を加えられ負担と感じること、又は当該行為により当該行為を受けた者の職場環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること ○ 「身体的若しくは精神的な苦痛を与える」又は「就業環境を害する」の判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」を基準とする

参照:「厚生労働省:パワーハラスメントの定義について」

  • 職場の地位・優位性を利用している

地位や優位性とありますので、上司だけでなく、同僚や先輩・後輩なども対象に含まれる。

  • 業務の適正な範囲を超えた指示・命令

業務上明らかに必要性がない言動や目的を大きく逸脱した言動など。

  • 相手に著しい精神的苦痛を与えることや、その職場環境を害する行為

暴力や人格、名誉を傷つける言動により身体的精神的苦痛から仕事への能力の発揮を阻害されること

このように定義されています。

代表的なパワハラとなる言動「6つの類型」

次にパワーハラスメントに当たりうる言動には大きく分けて6つあります。

 身体的侵害上司が部下に対して、殴打、足蹴りをする
 精神的侵害上司が部下に対して、人格を否定するような発言をする
 人間関係からの切り離し自身の意に沿わない社員に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりする
 過大な要求上司が部下に対して、長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずる
 過小な要求上司が管理職である部下を退職させるため、誰でも遂行可能な受付業務を行わせる
 個の侵害思想・信条を理由とし、集団で同僚1人に対して、職場内外で継続的に監視したり、他の従業員に接触しないよう働きかけたり、私物の写真撮影をしたりする

上記の6つの行為がパワハラにあたると考えられますが、これらの行為に該当しそうな行為であったとしても前述にある「3つの要素」を満たされていない場合はパワハラにあたらない可能性もあることに注意が必要です。

コーヒーを買ってきてはパワハラとなるのか

今回のタイトルにもある「コーヒーを買ってきて」と言ったことは業務とは関係なく、「私用な雑用」となる行為です。さらにこの行為が上司や先輩、同僚などからの「強制的」な言動から「肉体的精神的苦痛がある」ことがパワハラとなる可能性になります。
来客をもてなすための買い出しであれば業務として捉えることはできますが、個人的な頼み事となると業務には直接関係はないでしょう。そのため、「過大な要求」となりパワハラにあたる可能性があります。
「過大な要求」と言うと、自分の能力以上の仕事を言われることや達成不可能なノルマを課せられることを思い浮かべるかと思われますが、「業務に直接関係ない作業を命ずる」こともパワハラ行為となることも理解しておくことが重要です。次項にもあるように、何が業務で、何が私用なのかもしっかりと線引きし、混同しないようにしましょう。

どこまでが仕事の範囲?すべてが業務命令ではない

過大な要求で従業員への嫌がらせを目的とした場合はパワハラとなることは当然のことですが、悪気などがなく行っている場合でも「過大な要求」とみなされ、パワハラとなる可能性も十分に考えられます。
上司からの小さな私用の頼み事も初めは「業務命令」「これくらいは」と思い行っていたことから徐々にあれもこれもと増えてくることもあります。さらに度を過ぎると個人的な頼み事も多く、「あれも、これもと」までも言われる可能性があります。勤務中での頼み事は、つい「業務だから」と割り切ろうとしてしまいます。また断ることがボーナスや昇給に響いてしまうのではないかと言う思いもあり、断り切れないこともあるでしょう。
「業務命令」とは使用社(会社側)が業務遂行のために労働者に対して行う指示または命令のことを言います。業務命令と一口に言っても残業命令や配転命令など多種多様な権利がありますが、その業務命令が労働契約外の物であれば拒否することに何ら問題はありませんし、不利益を受けることはありません。もし拒否したことで減給や嫌がらせなど、不利益を与える事があればパワハラとなり処分対象となります。

「コーヒーを買ってきて」の一言が思わぬ方向にいくこともある

「コーヒーを買ってきて」の一言がパワハラになる可能性もあることをお分かりいただけましたでしょうか。相手との関係性にもよりますが、頼み方が「強制的」であり、さらに「上司命令」などと加えた言葉であると「過大な要求」といったパワハラにあたることになるでしょう。
「コーヒーを買ってきて」だけでなく、「私用である郵便物を出す」ことや「お茶を入れて」など業務に関係ないことを頼むことで「過大な要求」となることもあります。
頼んだこと、頼まれたことが本当に業務と言えるのかを考え、行動するようにしましょう。もし業務外の事を頼まれたのであればしっかりと断ることをしましょう。また、頼む側としては、自分に悪気がなくとも相手の受け止め方次第ではハラスメントとなり得る可能性もあります。思わぬ一言がハラスメントとなり、取り返しがつかない状況になることもありますので注意するようにしましょう。