パワハラ?「会社やめたら?」って言ったら問題ありますか?

様々なハラスメントがある現代ですが、パワハラについて深く考えたことはありますか?ミスをしてしまった部下に対しての叱責や、コミュニケーションと思って行っていたことなど、言動一つ一つがハラスメントとなる可能性があります。
現在、管理職をされている方や、バリバリと仕事をこなす人でも、大なり小なりミスをしたことはあるはずです。そのミスを当時の上司や先輩のフォローがあり、今に至っているのではないでしょうか。もしかしたら当時は書類を投げつけられることや「そんなこともできないのか」や「仕事もできないやつだな」などきつい言葉を言われながら仕事を覚え、学んでいったこともあるかもしれません。ですが、本当にそれは正しい指導なのでしょうか。その言動を受けたことで、悔しさから這い上がろうと努力をする人ももちろんいますが、反対にその言動により落ち込み、仕事が手につかないといった人もいます。さらには仕事ができなくなる人もいます。昔なら許されていたかもしれない言動であっても、現代社会では大きな問題となることも少なくありません。そこで今回は、部下に対して「会社やめたら?」と言うことに対してどのような問題があるのかを考えてみましょう。
「会社やめたら?」って言いうことは問題になるのでしょうか?
結論からお伝えすると、「会社やめたら?」と言うことは大きな問題となる可能性があります。
ミスをしてしまった部下や後輩に「会社やめたら?」と言うことで、人によっては負けん気から這い上がってくる人もいますが、すべての人がそうとは限りません。その一言が精神的に大きなダメージを受けてしまうことで、今後も仕事ができなくなるといった事態になることもあり、精神障害を患ってしまう人も少なくありません。そうなってしまうと、その人の人生まで大きく狂わせてしまうことにもなりかねません。また暴言を他の従業員や顧客がいる前で怒鳴りつける行為はパワハラだけでなく、「名誉棄損罪」にあたる可能性もあり、非常に危険な行為と言えます。
指導をしていると、イライラなどの感情も出てくることがあるかもしれませんが、「会社やめたら?」といった一言が自分や相手を含めその他にも多くの人の人生も狂わせてしまうなど大きな問題となり、取り返しがつかなくなることもありますので、しっかりと意識して行動することが大切です。
パワハラの定義について3つの要素と6つの類型を理解しておく
ではなぜ「会社をやめたら」と言うことがパワハラとなる可能性があるのでしょうか。まず、パワハラについて3つの要素と6つの行動類型があることを知っておきましょう。
パワハラを定義する3つの要素
職場のパワハラとは、同じ職場で働くものに対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に業務上適正な範囲を超えて、身体的もしくは精神的な苦痛を与えることや職場環境を害する行為とされています。
- 優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
- 業務の適正な範囲を超えて行われること
- 身体的もしくは精神的な苦痛を与えることと、または就業環境を害すること
これら3つの要素のいずれも満たすものを職場のパワーハラスメントの概念としております。
6つの行動類型
- 身体的な攻撃
- 精神的な攻撃
- 人間関係からの切り離し
- 過大な要求
- 過小な要求
- 個の侵害
6つの類型であったとしても、3つの要素のいずれか欠く場合であれば、職場のパワーハラスメントにあたらない場合もあります。
なぜ「会社やめたら?」って言うとパワハラになるの?その理由とは
パワハラとは、前述にもあるように6つの類型で3つの要素を満たした場合において、ハラスメントとされることをご理解いただけたかと思います。今回の「会社辞めたら?」と言うことは「精神的な攻撃」にあたる可能性があります。精神的攻撃には脅迫や名誉棄損、侮辱、ひどい暴言などがあります。「会社やめたら?」と言った言葉は「雇用を不安にさせる言動」としてパワハラとして認定されることが多い言葉です。また、「やめたらいい」などの言葉は「できないやつだ」「無能だ」など言い換えることができるでしょう。これは、人格否定ともなり得ることもあり名誉棄損にも該当する可能性があります。その他にも「精神的な攻撃」によるパワハラとしては、「ばかやろう」「給料泥棒」「お前がいなくても仕事は回る」「役職はいつ降りてくれてもいいよ」などがあります。ただ、これらすべての言葉がパワハラにあたるとは言い切れません。パワハラかどうかを判断するには「言動の目的」や「言動を受けた労働者に問題行動があったかどうか」「適切な指導の範囲内かどうか」「双方の関係性」など言葉以外にも様々な事情を考慮する必要があります。
指導とパワハラの違いを理解しておこう
ここまでパワハラについてみていただきましたが、パワハラにならないようにと恐れてばかりいては指導ができなくなります。そこで、指導とパワハラがどう違うのかを理解しておくことが重要です。
指導とは、その人の成長を促すもの
指導とは、その人を目標に向かって導いていくための事を言います。時には厳しく叱ることや、声を荒げることもありますが、常に「成長してほしい」「よい方向に向かってほしい」と言った思いをもっておこなうことを言います。
パワハラの場合は、指導のつもりで行っていたとしても、一方的なもの、感情的なものであり、相手が今どう感じているかなどは配慮されず行われてしまいます。
指導をする際は、何のために指導をするのかを良く理解し、冷静かつ穏やかに部下の気持ちに配慮しながら行うことが重要です。
自分の言動を振り返り、パワハラを回避することが大切です

自分自身の発言が「パワハラになってしまうのではないか」と不安に感じることもあるでしょう。ですが、管理職や指導者がパワハラを恐れて指導しないということはできません。まずは、ご自身の言動について振り返って考えることが大切です。
気を付けるべき言動とは
「人格否定をするような発言をしていないか」
「好き嫌いで人を見ていないか」
「自分の機嫌によって、接し方に違いはないか」
「自分の気持ちを優先して、周囲の気持ちを無視していないか」
「ストレスを部下にぶつけていないか」
「部下からの相談があった時に、パソコンなどを操作しながら対応していないか」
以下の言動をしていないかを考え、思い当たるものがあれば、改善していくことが重要です。
どのような対策をとるとよいか
「部下のミスには怒りなどをぶつけず、感情をしっかりコントロールし対応する」
「昔のやり方や常識が正しいと思わず、常に最新の知識や意識を取り入れる」
「自分と違う考え方を否定せず、ひとつの意見として、耳を傾ける姿勢で大切」
「説明不足や意見の食い違いなど、トラブルを未然に防ぐために説明力を身につける」
「自分が間違うこともある。素直に謝ることをする」
パワハラを回避するためにも、これらのことを心掛け行動するようにしておきましょう。
感情に流がされた発言はパワハラとなるので気を付けましょう

指導する立場であっても人間です。間違いもあれば、腹が立つこともあります。ですが、感情のままに言葉をぶつけてしまうことや、手を上げるようなことで押さえつける行為は指導ではなく、パワハラと言えるでしょう。部下も一人の人間であり、上司からの言葉は特に重く感じてしまいます。自分自身にパワハラをしているつもりがなくても、「会社やめたら?」といった一言が、大きな問題にも発展しかねません。
また、パワハラを恐れて間違ったことやミスをしたことを指摘できなければ、成長にもなりませんし、会社にとっても不利益となることも多くあるでしょう。感情をコントロールし、何が適切なのかを判断できるような柔軟な対応も求められてきます。自分の言動に問題がないかをしっかりと考え、指導することが大切です。